(2026年4月更新)中東情勢によるプラスチック原料の供給不安が深刻化。ビニール包装・プラ容器の調達困難や価格高騰に直面する食品メーカー・EC事業者が増えています。この記事では、プラスチック包装材の供給リスクの実態と、その代替としての「機能紙」への切り替えについて解説します。
いま何が起きているのか ─ ホルムズ海峡封鎖とプラスチック供給危機
2026年2月末、米国・イスラエルによるイラン攻撃を契機に、世界の海上原油輸送の約2割が通過するホルムズ海峡が事実上の封鎖状態に陥りました。
4月に入りパキスタンの仲介で停戦合意が成立したものの、2026年4月9日時点でも海峡を通過できた船舶は1日わずか数隻にとどまり、平時の約135隻とは程遠い状況が続いています。停戦は極めて不安定であり、通航の本格的な回復は見通せていません。
原油だけではない ─ プラスチック原料「ナフサ」への直撃
ホルムズ海峡封鎖と聞くと「ガソリンが値上がりする」というイメージが先行しますが、食品業界にとってより深刻なのは プラスチックの原料となる「ナフサ」の供給不安 です。
ナフサとは原油を精製して得られる化学原料で、ここからエチレンやプロピレンが生成され、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのプラスチック素材が作られます。日本はナフサ輸入の7割以上を中東に依存しており、海峡封鎖はプラスチック製品の製造に直結する問題です。

実際に国内では以下のような影響が出始めています。
- 化学メーカーのエチレン減産:三井化学などが大阪の工場でエチレン生産設備の減産を開始
- プラスチック原料価格の急騰:和歌山の包装シートメーカーでは原材料価格が約4割上昇
- ナフサ在庫の逼迫:国内ナフサ在庫は危機前で2〜3週間分しかなく、川下製品(ポリエチレン・ポリプロピレン等)の在庫も約2か月分と見積もられている状況
食品包装に使われるビニール袋、プラスチックトレー、フィルム包装などは、すべてこのナフサ由来の素材から作られています。封鎖が長期化すれば「包装材が入手できない」「包装コストが大幅に上がる」という事態は、もはや想定の範囲内です。
食品業界で急増する「紙への切り替え」相談
当サイト「機能紙選定ナビ」にも、中東情勢を受けた包装材の切り替えに関するご相談が増えています。ここでは、実際に寄せられるお問い合わせに多い内容を3つご紹介します。
事例1:焼き菓子メーカー ─ 個包装フィルムの価格高騰
焼き菓子のOEM製造を行っています。
個包装に使用しているプラスチックフィルムの仕入れ価格が3月以降急騰しており、今後の供給も不透明と取引先から言われています。
紙素材でバリア性のある個包装用の資材があれば、切り替えを検討したいです。

左
プラスチック包装
価格高騰・供給不安
右
バリア紙包装
安定調達+機能維持
菓子の個包装には酸素や水蒸気を遮断するバリア性能が求められます。従来は「紙では対応できない」と考えられていた領域ですが、近年はバリアコーティング紙の技術が大きく進歩しており、紙素材での対応が可能になりつつあります(後述の「シールドプラス」など)。
事例2:健康食品EC ─ スタンドパウチの納期遅延
自社ECで粉末タイプの健康食品を販売しています。現在チャック付きのプラスチック製スタンドパウチを使っていますが、中東情勢の影響で次回ロットの納期が大幅に遅れる見込みです。紙製のチャック付き袋など、代替になる包装資材はありますか?

左
プラスチックパウチ
納期遅延・供給不安
右
紙製スタンドパウチ
安定調達+機能対応
チャック付きのスタンド袋についても、紙製バリア素材を使った製品が市場に出始めています。プラスチック製と全く同じ仕様にはならないケースもありますが、商品特性や保存条件に合わせた最適な素材を選定することで、紙製への移行は十分に検討可能です。
事例3:漬物製造業者 ─ まずは外装だけでも紙に
地元スーパーや道の駅向けに漬物を製造・販売しています。真空パックのビニール包装資材が値上がりし、小ロットでの調達も難しくなってきました。すべてを紙に切り替えるのは難しいと思いますが、外装や化粧箱だけでも紙製に変えてコストを抑えられないかと考えています。

左
プラスチック包装
コスト増・調達難
右
紙外装パッケージ
コスト抑制+付加価値向上
「全部を一度に紙にする」のではなく、「まずは外装から」という考え方は非常に現実的です。実際、多くの企業が外箱・化粧箱・緩衝材など、切り替えやすい部分から段階的に紙化を進めています。
これらの事例に共通するのは、中東情勢をきっかけに「石油由来の包装材に頼り続けるリスク」に気づき、紙への切り替えを具体的に検討し始めているという点です。供給途絶リスクは今回に限った話ではなく、今後も繰り返される可能性があります。
なぜ「紙」が代替として有力なのか
プラスチックの代替素材としては、再生プラスチック、バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックなどがありますが、原料の供給途絶リスクが低く、最も汎用性が高く導入しやすい代替素材が「紙」 です。
紙が選ばれる3つの理由
1. 原料の供給途絶リスクが低い ─ 中東情勢の影響を受けにくい
紙の原料は木材パルプであり、石油由来のナフサとは異なるサプライチェーンで製造されます。ただし、紙も値上がりしていないわけではありません。紙の製造工程では化石燃料や電力を大量に使うほか、一部の製紙用薬品にはナフサ由来の原料が使われており、原油高の影響で製紙各社も2026年に入り10%以上の値上げを相次いで発表しています。
それでも紙がプラスチックより優位といえるのは、「そもそも原料が手に入らない」という供給途絶リスクが大きく異なる点です。プラスチックはナフサの中東依存度が極めて高く、海峡封鎖で物理的に原料が止まりかねない状況ですが、紙の原料であるパルプは国内生産に加え、北米・北欧・南米・オセアニアなど調達先が分散されています。「値上がりはするが手に入る」と「値上がりした上に手に入らないかもしれない」では、事業継続のリスクレベルが全く違います。
2. 技術の進歩で食品包装にも対応できるようになった



「紙では食品の保存ができない」というのは一昔前の常識です。現在は、酸素や水蒸気を通さないバリアコーティングを施した包装紙や、耐水・耐油性を持つ紙素材が開発されており、食品の品質保持に十分対応できる機能紙が多数存在します。
代表的な製品の例:
- シールドプラス(日本製紙):
紙の表面に特殊コーティングを施し、酸素・水蒸気のバリア性能を実現。従来のプラスチックフィルムと同等の包装が紙で可能に。菓子や乾燥食品の個包装、チャック付きスタンド袋にも採用実績あり - ラミナ(日本製紙):
プラスチックフィルムを使わず、紙だけでヒートシール(熱接着)ができる包装紙。ラミネート工程が不要でリードタイムを大幅短縮。バリア性が不要な食品の二次包装・日用雑貨・化粧品等の包装に対応 - 紙製容器:
木材パルプを原料とした成形容器で、プラスチックトレーや緩衝材の代替として使用可能。耐水・耐油処理を施すことで食品用途にも対応し、惣菜・青果・弁当容器などで採用実績あり。立体成形により保護性能にも優れ、輸送時の破損防止にも寄与。
3. 環境対応・ブランド価値の向上につながる
プラスチック資源循環促進法(2022年施行)により、企業にはプラスチック使用量の削減が求められています。紙への切り替えは法規制への対応であると同時に、消費者に対する環境配慮のアピールにもなります。
大手菓子メーカーが外袋を紙製に変更したり、飲食チェーンが紙ストロー・紙容器を導入するなど、業界全体で「プラから紙へ」の流れは加速しています。先ほどの事例3のように「まずは外装だけでも紙に切り替えた」という取り組みでも、自社の環境対応として十分に発信可能です。
食品パッケージ ─ どこまで紙に切り替えられるのか
「すべてのプラスチック包装を紙にできるわけではないのでは?」という疑問はもっともです。現時点での切り替えの実態を整理します。
紙への切り替えが比較的容易なもの
- 外箱・化粧箱:菓子、調味料、健康食品などの外装パッケージ(事例3のようなケース)
- ピロー包装(個包装):バリアコーティング紙を使えば、焼き菓子や乾燥食品の個包装に対応(事例1のようなケース)
- 仕切りトレー・緩衝材:プラスチックの仕切りやプチプチの代わりにパルプモールドやクラフト紙を使用
- 手提げ袋・ショッピングバッグ:ビニール袋から紙袋への切り替え
- 食品用容器:焼き菓子、パン、和菓子向けの紙製容器
段階的な切り替えが現実的なもの
- チャック付きスタンドパウチ:紙製バリア素材を使った製品が登場しているが、商品特性に合わせた個別検証が必要(事例2のようなケース)
- 液体を直接入れる容器:耐水コーティング付き紙容器は実用化されているが、完全な液密性にはフィルムとの併用が有効
- 長期保存が必要な食品:バリア性能の要求水準によっては、紙+最小限のフィルムという「減プラ」アプローチが現実的
ポイントは「完全な脱プラ」でなくても「減プラ」で十分な効果があるということです。 まずは外装や緩衝材など切り替えやすい部分から始め、実績を踏まえて段階的に紙化の範囲を広げていくのが、コスト面でもリスク面でも堅実な進め方です。
コストの問題 ─ 紙に切り替えるとコストは上がるのか
正直に申し上げると、紙素材も値上がりしています。製紙各社は2026年に入り10%以上の価格改定を発表しており、「紙に切り替えればコストが下がる」という単純な話ではありません。
しかし、プラスチック包装材との比較で見ると状況は異なります。

- プラスチック原料は約4割の価格上昇に加え、そもそも調達できるかどうかが不透明。紙は値上がりしているものの、原料の供給途絶リスクはプラに比べ大幅に低い
- 「値上がりした包材」と「値上がりした上に届かないかもしれない包材」では、事業継続リスクの深刻度が全く異なる
- 事例3のように外装や化粧箱から紙化を始めれば、商品全体のコスト構造への影響を抑えつつ移行できる
- ギフト商品や限定商品から紙包装を導入 すれば、商品単価に包装コストを転嫁しやすい
- 紙への切り替えを「環境への取り組み」として発信すれば、ブランディング効果で間接的にコストを回収 できる
どちらの素材も値上がりしている今、比較すべきは単価の差ではなく、「必要な時に確実に手に入るかどうか」という調達の安定性です。
食品メーカー・EC事業者がいま取るべき3つのアクション
ステップ1:現状の包装材のリスク評価
自社で使用しているプラスチック包装材について、サプライヤーに納期・価格の見通しを確認しましょう。事例1・2のように「次回ロットの納期が不透明」「価格が急騰」といった兆候がすでにある場合は、代替素材の検討を並行して始めるべきタイミングです。
ステップ2:切り替え可能な部分の洗い出し
全パッケージを一度に切り替える必要はありません。事例3のように、まずは外装・化粧箱・緩衝材など、比較的切り替えやすい部分から特定するのがおすすめです。
ステップ3:機能紙の専門家に相談する
食品包装に使える紙素材は種類が多く、バリア性・耐水性・耐油性・印刷適性など、求められる機能は用途によって異なります。自社の商品特性に合った最適な紙素材を選定するには、機能紙の知識を持つ専門家への相談が近道です。
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まとめ
- ホルムズ海峡の封鎖は停戦後も事実上続いており、プラスチック原料「ナフサ」の供給不安は現在進行形の問題
- 食品包装に使われるビニール袋・フィルム・トレーなどの調達困難・価格高騰が現実化しており、機能紙選定ナビにも切り替え相談が増加中
- 紙素材もエネルギーコスト上昇で値上がりしているが、プラスチックのような原料の供給途絶リスクは低く、事業継続の観点で優位。バリアコーティング技術の進歩で食品包装への対応力も大きく向上
- まずは外装や緩衝材など切り替えやすい部分から「減プラ」を始め、段階的に紙化の範囲を広げるのが現実的
- 包装材の供給リスクが高まっている今こそ、紙への切り替えを検討する好機
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