紙の可能性を広げる、新しいPRのかたち
近年、企業のPR活動や展示イベントでは「いかに来場者に伝わりやすい形で自社の技術や取り組みを紹介できるか」が重要なテーマになっています。
その手法の一つとして注目を集めているのが「紙」を活用した展示・教育用の模型です。環境に優しく、加工の自由度が高い紙は、サステナブルな素材としての価値に加え、企業の姿勢を表現する手段としても有効です。
今回ご紹介するのは、日本航空グループの整備部門を担う 株式会社JALエンジニアリング 様が取り組まれた、紙製模型を活用したプロジェクトです。水素を動力とする次世代航空機の仕組みを、一般の方や学生にもわかりやすく伝えるための展示用ペーパークラフトを製作するにあたり、弊社「機能紙選定ナビ」にご相談いただきました。


お客様の課題:水素航空機の仕組みを伝えるために
JALエンジニアリング様では、次世代航空機である「水素を動力とした航空機」の調査・研究を進めています。その一環として、水素でプロペラが回転する仕組みを体感できる「教育・展示用の模型キット」の製作を構想されていました。
▶ 企画の概要は以下の通りです。
- A3~A2サイズのペーパークラフト模型に、市販の水素燃料電池実験キットを搭載
- プロペラが実際に回転し、水素の仕組みが視覚的に理解できるよう設計
- エンジン部分は透明にし、中の仕組みが見えるようにする
ただし、そこには大きな課題がありました。
- 紙の強度不足:
水素燃料電池実験キットを支えるには通常のペーパークラフトでは耐えられません。単純に厚紙を使えば良いわけではなく、過度に硬すぎると加工性が下がり、組立や切削が困難になるため、強度と加工性の両立が求められました。 - 湿気や時間経過での変形リスク:
展示イベントは夏場の屋内外を問わず湿度変化の影響を受けやすく、時間が経つと紙がたわみやすくなります。主翼や胴体がわずかに曲がるだけでも、プロペラやモーターの動作に支障をきたす恐れがありました。 - モーターの振動や発熱による劣化:
水素燃料電池実験キットのモーターは回転時に振動を生みます。また長時間のデモンストレーションでは発熱も避けられず、紙の接合部が剥がれたり、熱で強度が低下するリスクが懸念されました。 - 加工の難易度と短納期対応:
大判サイズで精密な造形を求められるため、通常の手加工では精度に限界があります。さらに、イベント日程に間に合わせる必要があり、短期間で正確に製作できる体制が不可欠でした。
「エコ素材として紙を使いたいが、強度や耐久性が心配」という状況で、弊社にお問い合わせをいただきました。
機能紙選定ナビからのご提案と対応
弊社ではまず、候補となる高強度紙や加工適性の高い機能紙を複数提示し、リモート会議を通じてJALエンジニアリング様と協議を重ねました。
▶ 検討のポイントは次の通りです。
- 水素燃料電池実験キットの重さを支える強度
- 湿度や振動に対する耐性
- 組立のしやすさと加工の自由度
- 見た目の美しさ(透明パーツとの組み合わせ)
その結果、「加工性」と「強度」のバランスが取れた紙 を選定し、サンプルカッターによる試作を実施。数度の調整を経て、イベントに耐えうる完成度を実現しました。さらに、振動対策として主翼や後部に土台を追加し、安全性と安定性を確保しました。
\ 実際に製作した飛行機の模型 /

導入後の成果:イベントでの活用
完成した紙製模型は、2025年8月28日に羽田空港で行われた 「水素燃料電池航空機けん引車 お披露目イベント」 にて展示されました。
飛行機の模型には水素燃料電池実験キットを組み込みました。ソーラーパネルで発電した電力を使って水を電気分解し、生成された水素を燃料電池で電力に変換。その電力でモーターを駆動させ、プロペラを回転させるデモンストレーションを実施しました。来場者は「水素がどのように電力へ変わり、最終的に飛行機を動かす力になるのか」を、模型を通じて体感的に学ぶことができました。
このイベントは東京都の「燃料電池モビリティ早期実装化支援事業」に採択された取り組みの一環で、東京都知事・小池百合子氏をはじめ多くの関係者・メディアが参加。模型を使った燃料電池デモンストレーションも披露され、マスメディアや高校生など幅広い層に「水素で飛行機が動く仕組み」を直感的に伝えることができました。
小池都知事からは次のようなコメントも寄せられています。
燃料電池航空機けん引車は、全国で初めての導入であり、水素エネルギーを活用する先進的な取り組みです。日本の空の玄関口である羽田空港で脱炭素化を進めることは、東京から世界に向けた力強いメッセージになります。これを契機に、空港内モビリティの技術開発の更なる進展、持続可能な未来の実現に向けて、取り組みが一層加速していくことを期待します。
小池都知事のコメントは、水素エネルギーを活用した先進的な取り組みを羽田空港から世界へ発信する意義に触れたものです。これは環境技術を社会に広く伝えるという観点にも通じており、今回の紙模型の活用とも重なります。
水素で動く仕組みを紙というエコ素材で表現したことは、わかりやすさと環境配慮の両方を伝える取り組みとなりました。羽田空港という国際的な場で披露されたことで、教育的な役割に加え、環境姿勢を示すPR手法としても効果を発揮しました。


お客様の声
イベント終了後、JALエンジニアリング様からは次のようなご評価をいただきました。
- 「短期間で完成度の高い模型を提供いただき、展示イベントに間に合わせることができました。時間的な制約の中で、十分な強度と仕上がりを実現いただけたことに感謝しています」
- 「紙というエコ素材を使うことで、私たちの環境に配慮した姿勢を来場者に自然に示すことができました。持続可能性をテーマにしたイベントであったため、その点も非常にマッチしていたと感じています」
- 「実際に会場で紙模型を使いながら説明を行うと、来場者が仕組みを理解しやすく、質問も活発に出ました。特に高校生など若い世代から関心を持ってもらえたことは大きな成果でした」
展示会終了後には、写真や動画を広報活動に活用するご相談もいただきました。紙模型が単なる展示物にとどまらず、企業のPR素材として継続的に活躍していることが伺えます。さらに、今後は他の展示会や教育プログラムへの活用も検討されており、紙を使った取り組みが幅広い場面で役立つ可能性が広がっています。

今後の展望:紙×技術PRの可能性


今回の事例は、航空業界における「水素×紙模型」という先進的なPR活用例ですが、その可能性は航空業界にとどまりません。紙の特性とエコ素材としての価値を組み合わせることで、さまざまな分野で「わかりやすく伝える手段」として活用が期待できます。
- 自動車業界
EVや燃料電池車の仕組みを紙模型で再現すれば、複雑な技術を来場者が目で見て理解できます。展示会や試乗イベントでの教育ツールとして有効であり、環境配慮の姿勢を示す手段にもなります。 - エネルギー業界
発電所の仕組みや再生可能エネルギーの流れを紙模型で「見える化」することで、一般の方や学生への理解促進が可能です。特に風力や太陽光、水素など、普段は目にすることのできないエネルギーの流れを模型で可視化することで、来場者が理解しやすくなり、PR効果も高まります - 教育機関
STEM教育やSDGs学習の教材としても大きな可能性があります。紙模型を使って説明することで、環境問題やエネルギーの仕組みを直感的に理解でき、生徒の関心を高める教材となります。
このように、紙は単なる展示物にとどまらず、体験を通じて理解を深めるツールとして活用できます。環境配慮のメッセージも同時に伝えられるため、PRと教育を両立させる効果的な方法といえるでしょう。
まとめ
JALエンジニアリング様の取り組みは、紙の新しい可能性を示す好例となりました。
強度・加工性に優れた機能紙を活用した模型は、展示イベントでのPR効果を高めるだけでなく、企業の環境配慮姿勢を来場者に強く印象づけます。
「紙で新しいPR手法を試したい」「展示会や教育イベントで効果的に伝えたい」とお考えの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
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