(2026年7月更新)プラスチック資源循環促進法(通称:プラ新法)は2022年4月1日に施行されています。本記事では「自社は対象になるのか」「何をすべきか」「12品目のうち紙化が現実的なものはどれか」を、施行後の最新動向と取組事例をもとに、紙の専門商社の視点で整理します。
この記事の要点(3行サマリー)
- プラ新法は、設計から廃棄までプラスチックの資源循環を促す法律。基本原則は「3R+Renewable」
- 「特定プラスチック使用製品」12品目を年間5トン以上提供する事業者には、使用合理化が義務付けられる(不十分な場合は段階的措置、最終的に罰則あり)
- 対応策は有料化・代替素材への転換など複数。紙化が向く用途・向かない用途があり、見極めが重要
プラスチック資源循環促進法とは
プラスチック資源循環促進法(正式名称:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律/通称:プラ新法)は、製品の設計段階から廃棄・再資源化までを一体的に捉え、プラスチックの資源循環を促進するための法律です。
- 公布:2021年6月11日
- 施行:2022年4月1日
- 所管:経済産業省・環境省
- 公式情報:環境省「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ」
この法律は、海洋プラスチックごみ問題・気候変動・諸外国の廃棄物輸入規制強化といった国際的な動きを背景に制定されました。事業者だけでなく、自治体・消費者を含めたあらゆる主体が連携してプラスチックの資源循環に取り組むことを求めています。
法律の目的:3R+Renewableで何を目指すのか
本法律の基本原則は 「3R+Renewable」 です。
| 原則 | 意味 |
|---|---|
| Reduce(リデュース) | プラスチックの使用量・廃棄物の発生を減らす |
| Reuse(リユース) | 製品・部品を繰り返し使う |
| Recycle(リサイクル) | 廃棄物を資源として再利用する |
| Renewable(リニューアブル) | 再生可能資源(紙・バイオマス等)への切り替えを進める |
従来の3Rに「Renewable(再生可能資源への転換)」が加わったことがポイントです。プラスチックを減らすだけでなく、石油由来素材から、紙やバイオマスなどの再生可能資源に置き換える発想が加わりました。
事業者に求められる「5つの措置」
本法律は、プラスチック製品のライフサイクル全体をカバーしており、事業者には次の5つの段階で取組が求められます。
| 区分 | 措置 | 主な対象 |
|---|---|---|
| ① | 設計・製造段階:環境配慮設計指針への適合 | プラスチック使用製品を製造・販売する事業者 |
| ② | 販売・提供段階:特定プラスチック使用製品(12品目)の使用合理化 | 12品目を消費者に無償提供する事業者(小売・飲食・宿泊・クリーニング業など) |
| ③ | 市町村による分別収集・再商品化 | 市町村 |
| ④ | 製造・販売事業者等による自主回収・再資源化:認定制度の活用 | 製造・販売事業者等 |
| ⑤ | 排出事業者による排出抑制・再資源化等:産業廃棄物の削減 | プラスチック使用製品産業廃棄物を排出する事業者全般 |
ここを誤解しないでください。よく話題になる「ストロー・スプーンの有料化」(②)は、この法律の一部に過ぎません。製造段階での環境配慮設計(①)や、自社から出る産業廃棄物の削減(⑤)は、12品目を扱っていない製造業・事業者にも関係します。「うちは飲食店ではないから無関係」とは限らない点に注意が必要です。
自社は対象になる?対象事業者と「特定プラスチック使用製品」
最も話題になることが多い「②特定プラスチック使用製品の使用合理化」について、対象を整理します。
「特定プラスチック使用製品」12品目
商品の販売または役務の提供に付随して、消費者に無償で提供されるプラスチック製品のうち、次の12品目が「特定プラスチック使用製品」に指定されています。
| 分野 | 品目 |
|---|---|
| 飲食関連(5品目) | フォーク/スプーン(レンゲ・先割れスプーンを含む)/テーブルナイフ/マドラー/飲料用ストロー |
| 衛生・アメニティ関連(5品目) | ヘアブラシ/くし/かみそり/シャワーキャップ/歯ブラシ |
| 配送・クリーニング関連(2品目) | 衣類用ハンガー/衣類用カバー |
重要な前提:弁当容器・惣菜トレー・カップといった「容器包装」は、この12品目には含まれません。容器包装は別の法律(容器包装リサイクル法)の枠組みで扱われます。ただし容器包装も、措置①(設計)や⑤(産業廃棄物の削減)、自治体の分別回収強化、企業の自主目標といった観点から、脱プラ・減プラの対象になっている点は後述します。
対象業種
これら12品目を消費者に無償提供する以下の業種が対象となります。
- 各種商品小売業(百貨店など)
- 飲食料品小売業(コンビニ、スーパーなど/無店舗販売を含む)
- その他の小売業
- 宿泊業(ホテル、旅館など)
- 飲食店
- 持ち帰り・配達飲食サービス業
- 洗濯業(クリーニング店など)
主たる事業が対象業種でなくても、事業の一部で該当する提供を行っていれば、その範囲で対象になります。
義務化の対象=「多量提供事業者」
上記の業種に該当する事業者のうち、前年度に提供した特定プラスチック使用製品の量が年間5トン以上である事業者が「特定プラスチック使用製品多量提供事業者」として、合理化の取組が義務付けられます。
- 5トン未満の事業者:努力義務(取組が推奨される)
- 5トン以上の事業者:取組が著しく不十分な場合、勧告・公表・命令・罰則の対象
5トンの目安として、プラスチック製スプーン1本を約5グラムとすると、年間100万本に相当します。多店舗展開している小売・飲食チェーンなどで該当する可能性があります。
特定プラスチック使用製品12品目を業種別に整理(早見表)
自社がどの製品の対応を求められるか、業種別に整理しました。
| 業種 | 対象となる特定プラスチック使用製品 |
|---|---|
| コンビニ・スーパー・飲食料品小売業/飲食店/持ち帰り・配達飲食サービス業/百貨店等 | フォーク/スプーン/テーブルナイフ/マドラー/飲料用ストロー |
| 宿泊業(ホテル・旅館等) | ヘアブラシ/くし/かみそり/シャワーキャップ/歯ブラシ |
| 各種商品小売業(百貨店・量販店等)/洗濯業(クリーニング店等) | 衣類用ハンガー/衣類用カバー |
衣類用ハンガー・衣類用カバーは、クリーニング店(洗濯業)だけでなく、衣類を販売する百貨店・量販店などの各種商品小売業も対象になる点に注意が必要です。
求められる取組(合理化策)の選択肢
法律では、以下のような取組から自社に合うものを選択し、計画的に進めることが求められます。「紙に替える」ことだけが求められているわけではありません。
A. 提供方法の見直し(提供量そのものを減らす)
| 取組 | 具体例 |
|---|---|
| 有償提供(有料化) | スプーン・フォークを1本数円で販売 |
| ポイント還元・特典 | 受け取りを辞退した消費者にポイント付与(例:「グリーンライフ・ポイント」) |
| 意思確認 | 「ストロー(スプーン)はお付けしますか?」と確認する |
| 繰り返し使える代替手段の促進 | マイスプーン・マイ箸の利用促進 |
B. 製品自体の見直し(プラスチック使用量を減らす/別素材に切り替える)
| 取組 | 具体例 |
|---|---|
| 薄肉化・軽量化 | スプーンの柄に穴を開けて樹脂量を削減 |
| 代替素材への転換(紙) | 紙製アメニティ容器、紙製ハンガー、紙箱・紙袋などへの切替 |
| 代替素材への転換(バイオマス等) | バイオマスプラスチック、生分解性プラスチックへの変更 |
| リユース可能な製品への変更 | ホテルで使い捨てアメニティをやめ、フロント設置・受け取り式に変更 |
取組が進まない場合の措置・罰則
特定プラスチック使用製品の多量提供事業者(年間5トン以上)が、合理化の取組が判断基準に照らして著しく不十分な場合、主務大臣は以下の措置をとることができます(法第30条)。
- 勧告
- 勧告に従わない場合、社名の公表
- それでも従わない場合、命令
- 命令に違反した場合、50万円以下の罰金(法第62条/法人にも科される両罰規定あり)
なお、これとは別に、主務大臣はすべての特定プラスチック使用製品提供事業者に対して、必要に応じて指導・助言を行うことができます(法第29条)。いきなり罰金が科されるわけではなく、段階的に進みますが、社名公表はブランドイメージへの影響が大きく、実務上はその前の勧告の段階で対応を進めることが望まれます。
施行後の取組事例
施行後、多くの企業が具体的な対応を進めています。実際の数字とあわせて紹介します。
コンビニエンスストア(提供方法の見直し)
ファミリーマート:2024年1月29日より、全国の直営店舗約100店でプラスチック製カトラリー(スプーン・フォーク・ストロー等)の有料化を開始。この取組でプラスチック使用量を年間約4トン削減する見込みで、全国の店舗に拡大した場合は年間約715トン削減の見込みと公表しました。後日公表された検証結果では、対象店舗1店舗1日あたりの提供本数が有料化前51.0本から11.2本へ、約78%削減されたとしています。一方で同社は、売上への影響が見られた商品カテゴリーもあったことから、現時点での全国拡大は行わず、一部直営店舗での取組を継続するとしています。削減効果は確認されたものの、有料化の全店展開が一本調子で進むわけではないことを示す事例です。
飲食・カフェチェーン(代替素材の見直し)
スターバックス コーヒー ジャパン:2020年までに紙ストローへ全面移行していましたが、2025年1月から紙ストローを廃止し、植物由来の生分解性バイオポリマー製ストローへ切替(沖縄県内で先行導入、同年3月以降全国展開)。
マクドナルド:紙ストローに代えて、ストローなしで飲める「ストローレスリッド」を導入。2025年11月19日よりコールドドリンク用のフタを順次切替し、これに伴い紙製ストローの提供を順次終了しています。
ケンタッキー(KFC):マクドナルドに先行して、ストローなしで飲めるフタ「ドリンキングリッド」を2024年に全店へ順次導入しています(名称はマクドナルドと異なります)。
注目すべき動向:「紙ストローからの揺り戻し」
ストローは12品目で唯一、紙化が大きく進んだ品目でしたが、近年は「ふやける」「飲み心地が変わる」といった声を背景に、大手チェーンが紙ストローから別の方式(フタの変更・生分解性素材)へ切り替える動きが目立っています。これは「すべてを紙にすればよいわけではない」ことを示す象徴的な事例です。後述するように、紙化は用途との相性を見極めることが重要です。
プラスチックごみ排出量の動向
こうした各事業者の取組を背景に、国内の廃プラスチック総排出量は、2023年で769万トン(前年比52万トン減)と報告されています(プラスチック循環利用協会・2024年12月公表)。容器包装分野が排出量の大きな割合を占めており、容器包装側の対策が引き続き重要とされています。
12品目のうち、紙化が現実的なもの・慎重に検討すべきもの
「対応=とにかく紙に替える」と考えてしまいがちですが、それは適切ではありません。紙には向く用途と向かない用途があります。当社は紙の専門商社の立場から、無理な紙化はおすすめしません。12品目を相性で整理すると次のようになります。
| 相性 | 品目・用途 | 考え方 |
|---|---|---|
| 紙化・減プラがしやすい | ハンガー(紙製ハンガー)、アメニティの外箱・台紙・個装、付随する化粧箱・紙袋など | 強度・水濡れの条件が比較的ゆるく、紙への置き換え実績が多い領域 |
| 用途次第で検討 | くし・かみそり・歯ブラシなどの一部の部材 | 製品全体ではなく「一部を紙に」という減プラ対応が現実的なケースが多い |
| 紙単体では難しい・要検証 | 飲料用ストロー、汁物用スプーン・フォークなど | 液体や油分に長時間さらされる用途は、紙単体だと使用感の課題が出やすい。バイオマス素材・リユース・提供方法の見直しなど、紙以外の選択肢が適することもある |
大手チェーンが紙ストローから別方式へ切り替えた事例は、「液体に長時間触れる小物」の紙化が難しいことを示しています。逆に、台紙・外箱・ハンガー・包装といった領域は、紙への置き換えが進めやすい領域です。どこを紙にして、どこは別の手段にするかを切り分けることが、現実的な対応の出発点になります。
そして、12品目の対応を考える過程で多くの事業者が気づくのが、「紙が本当に活きるのは、12品目そのものよりも、商品を入れる容器や包装の側ではないか」という点です。次にこの容器包装の領域を説明します。
12品目だけではない――「容器包装」の脱プラ・減プラ
ここまで12品目を中心に説明してきましたが、実務で相談が多いのは、12品目には含まれない「容器包装」の領域です。
弁当容器・惣菜トレー・カップ・フードボックス・商品パッケージ・緩衝材などは、12品目の規制対象ではないものの、措置①(環境配慮設計)・措置⑤(産業廃棄物の削減)の観点、さらに自治体の分別回収強化・取引先からの脱プラ要請・ESGの観点から、紙化・減プラの検討が進んでいる領域です。当社の機能紙は、まさにこの容器包装側で活用されています。
| 機能紙 | 主な用途 |
|---|---|
| 耐油紙 | 油分の浸み出しを防ぐ。食品の包装・敷き紙など |
| 耐水紙 | 水濡れに強い。屋外掲示物・POP・水回りの紙製品など |
| 紙トレー・紙容器(パルプモールド等) | 食品トレー・緩衝材・成型容器など |
| バリア紙(シールドプラス等/日本製紙) | 酸素・水蒸気のバリア性が求められる包装。プラスチックフィルム同等の機能を紙で |
| ヒートシール紙(ラミナ等/日本製紙) | 紙だけでヒートシール(熱接着)が可能。バリア性が不要な二次包装・日用雑貨・化粧品包装など |
容器包装の紙化を具体的に検討したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. うちの会社は対象になりますか?
A. 12品目の合理化義務(措置②)の対象になるかは、「対象業種に該当」かつ「年間5トン以上の提供」という条件で判断します。一方、法律全体としては、製造段階の環境配慮設計(①)や自社が排出するプラスチック産業廃棄物の削減(⑤)など、12品目を扱わない事業者にも関係する措置があります。
Q2. 「年間5トン」を超えていないなら何もしなくてよいですか?
A. 義務化の対象外であっても、努力義務として取組が推奨されます。また、12品目の5トン基準とは別に、自社が排出するプラスチック廃棄物については、排出抑制・再資源化への取組(措置⑤)が求められます。さらに、取引先からの脱プラ要請、ESG投資、消費者の環境意識といった「法律以外の理由」でも、対応の必要性は高まっています。
Q3. ストローやカトラリーの有料化が必須なのですか?
A. 有料化は合理化策の一つに過ぎません。「有料化」「ポイント還元」「意思確認」「薄肉化」「代替素材への転換」「リユース化」など複数の選択肢があり、自社に合う組み合わせを選べます。
Q4. 12品目は全部、紙に替えるべきですか?
A. いいえ。紙には向く用途と向かない用途があります。台紙・外箱・ハンガーなどは紙化が進めやすい一方、飲料用ストローのように液体に長時間さらされる用途は、大手チェーンでも紙から別素材へ切り替える動きがあります。用途ごとに最適な手段(紙・バイオマス素材・リユース・提供方法の見直し)を選ぶのが現実的です。
Q5. 紙に切り替えるとコストが上がりませんか?
A. 同等機能のプラスチック製品と単純比較すれば、紙のほうが単価は高くなるケースがあります。ただし近年は紙製品も含めて原材料価格が上昇しており、コストは「紙か否か」だけで決まりません。石油由来素材の供給リスク、取引先からのサステナビリティ要請、ブランド価値といった要素も含め、自社の事情に即して判断する必要があります。
Q6. 容器・トレーは12品目ではないと聞きましたが、対応は不要ですか?
A. 容器包装は12品目(措置②)には含まれず、容器包装リサイクル法の枠組みで扱われます。ただし実務で脱プラ・減プラの検討を促しているのは、むしろ措置①(環境配慮設計)・措置⑤(産業廃棄物の削減)、自治体の分別回収強化、取引先からの要請、ESGといった要因です。実際、当社にも容器包装側のご相談が多く寄せられています。
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まとめ
- プラ新法は2022年4月1日に施行済み。3R+Renewableを基本原則に、設計から廃棄まで5つの段階で事業者に取組を求める法律
- 「特定プラスチック使用製品」12品目を年間5トン以上提供する事業者は、合理化の取組が義務化。不十分な場合は指導・勧告・社名公表・命令を経て、最終的に50万円以下の罰金
- 法律の対象は12品目だけではなく、製造段階の設計(措置①)や自社の産業廃棄物の削減(措置⑤)はより広い事業者に関係する
- 対応策は有料化・代替素材への転換など複数。紙化は用途との相性を見極めることが重要で、すべてを紙にするのが正解ではない
- 実務で相談が多いのは、12品目に含まれない「容器包装」の脱プラ・減プラ。耐油紙・耐水紙・紙容器・バリア紙などが活用されている
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公式情報・参考リンク
- 環境省「特定プラスチック使用製品の使用の合理化」:https://plastic-circulation.env.go.jp/about/pro/gorika
- 環境省「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(プラ新法)の普及啓発ページ」:https://plastic-circulation.env.go.jp/
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