
私たちが毎日手にする紙。その正体は、植物からとれた「繊維(ファイバー)」の集合体です。そしてこの繊維は、活かし方しだいで硬い板のような素材にも、しなやかな糸にもなり、衣類や人工芝にまで姿を変えます。
ペーパーサミットジャパン2026を訪ねて
2026年7月、東京・浜松町の東京都立産業貿易センターで開かれた「ペーパーサミットジャパン2026」(主催:全日本印刷工業組合連合会/日本洋紙板紙卸商業組合)に、機能紙選定ナビを運営する田村商店として足を運びました。「紙とどこまでも」をテーマに全国の出展者が集まったこの会場で、洋紙・板紙を扱う私たちの目をとりわけ引いたのが、まさに「紙の繊維」を活かした製品群でした。本記事では、その中でも素材としての可能性を強く感じた事例を、機能紙の視点で紹介します。








- 2026年7月開催「ペーパーサミットジャパン2026」の見学レポート。紙の可能性を、機能紙の視点で紹介します。
- 紙の正体は植物繊維(セルロース)。活かし方しだいで、硬い紙にも、糸(人工芝や衣類)にもなります。
- 会場で見た対照的な2例:硬い紙「バルカナイズドファイバー(ファイバー紙)」のアクセサリーと、アバカの紙糸「かみのいと OJO⁺」でできた紙製人工芝「ペーパーターフ」。
- どちらも生分解性の高い脱プラ素材で、供給リスク回避・環境配慮の観点から注目される機能紙です。
▶ペーパーサミットジャパン2026 公式サイト
そもそも「紙」は繊維からできている
紙は、木材などの植物からセルロース繊維を取り出し、漉き合わせてつくられます。その繊維をどう引き出すかによって、紙は硬い板のような素材にも、しなやかな糸にもなります。
ペーパーサミットの会場では、その両極端とも言える2つの活かし方を実際に見ることができました。ひとつは繊維を固めて硬い紙にするもの、もうひとつは繊維を糸にして、衣類や人工芝に仕立てるものです。順に紹介します。


繊維を固める ── ファイバー紙(バルカナイズドファイバー)
バルカナイズドファイバーとは
バルカナイズドファイバーとは、木材パルプやコットンパルプからつくった原紙を薬品で処理し、セルロース繊維を強く結び付けたシート状の硬質素材です。「ファイバー紙」とも呼ばれます。軽いのに紙より格段に強靭で、切断・折り曲げ・プレスといった加工がしやすく、耐熱性や電気絶縁性も備えるため、古くから電気部品などにも使われてきました。植物繊維が原料のため生分解性に優れ、プラスチックの代替材料としても注目されています。
そしてもう一つ、プロダクトや工作で活きるのが「水を含ませると曲げやプレスがしやすくなり、乾くと再び硬さを取り戻す」という加工特性です。抜き加工や成形の自由度が高く、小さな装飾品から工業部品まで幅広く使われています。会場でも、この素材を身につけるかたちに仕立てた製品に出会いました。

活用例|身につける紙のアクセサリー
会場では、このファイバー紙を使った耳飾りが2社から出展されていました。同じ素材でも、活かし方はそれぞれ異なります。
仙台七夕の吹流しをモチーフにした紙のアクセサリー「kamimi(カミミ)」(ユーメディア)。この仙台七夕edition は、七夕飾りの和紙を手がける鳴海屋紙商事とのコラボレーションで、実際に街を彩る吹流しと同じ和紙を意匠に使っています。その和紙を、水や汚れに強いファイバー紙と組み合わせることで、軽く繊細でありながら、雨の日でも身につけられる仕上がりに。
メーカーの説明では、紙製ゆえに軽く耳への負担が少ないこと、水や汚れに強いこと、プラスチックに代わる素材であることが特徴として挙げられていました。金具には、アレルギーが起きにくく医療器具にも使われるサージカルステンレスを採用し、肌への配慮もなされています。街を彩る和紙の意匠を、ファイバー紙の軽さ・耐水性・脱プラという機能が支える。異なる紙の長所を一つに束ねた好例でした。(下記リンクより商品の購入もできます)






▶ ブースの説明はこちら
もう一方の耳飾り「かみくず」(株式会社オフセット岩村)も、本体は同じバルカナイズドファイバーです。名前のとおり、くしゃくしゃに丸めた紙を模した形。一つひとつ手作業でつくられるため、同じ形のものは二つとありません。大ぶりに見えても軽く、金具にあたる部分には金属を使わず、樹脂製のパーツが用いられています。
和紙の意匠を活かすか、紙そのものの姿を形にするか。アプローチは対照的ですが、どちらも「軽くて、長時間つけていられる」点は共通しています。素材はひとつでも、引き出せる価値がここまで変わる——これがファイバー紙の懐の深さです。
同じブースには、トロリとしたひだが特徴の「ドレープ」をはじめとする耳飾りや、紙製のクリップなど、バルカナイズドファイバーを使った品が並んでいました。あわせて、コースターやランチョンマットといった別素材の製品も。印刷会社のスタッフが専門知識と自由な発想で手がけた品々です。会場で出会った商品を、写真でご紹介します。(下記リンクのECサイト『紙と印刷』より商品の購入もできます)





▶ 紙と印刷(かみといんさつ) 詳細はこちら
▶ 株式会社オフセット岩村 詳細はこちら
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繊維を糸にする ── 紙の糸「かみのいと OJO⁺」とペーパーターフ
もうひとつは、繊維を「糸」にする活かし方です。その代表が、アバカ由来の紙糸「かみのいと OJO⁺(オージョ)」。アバカは、植物繊維の中でもとりわけ強靭で耐水性に優れ、船舶用ロープやコーヒーフィルターにも使われてきた素材です。その繊維を紙にし、細く裂いて撚ることで、糸として生まれ変わります。
軽くて丈夫なうえ、吸水・速乾・抗菌といった機能をあわせ持つことから、「かみのいと OJO⁺」はジャケットやセーターなどの衣類(アパレル)をはじめ、インテリアや寝具などにも幅広く使われています。
そして会場で存在感を放っていたのが、この紙の糸を芝葉(パイル)部分に使った紙製人工芝「ペーパーターフ®」(王子ファイバー/KPPグループ、販売:国際紙パルプ商事)でした。同じ紙の糸が、身にまとう服にも、足元の芝にもなる——ここに紙の繊維の可能性が表れています。





▶ 紙が「服」にも「人工芝」にもなる ── かみのいと OJO⁺ の詳細はこちら

最大の特徴は、脱プラ・生分解性です。紙由来のため、万一パイルがちぎれて流出しても、マイクロプラスチックの発生源になりません。加えて、吸湿・放湿性により屋外で日差しを受けても熱がこもりにくく、消臭・抗菌性や、裸足でも心地よい肌触りといった、運用面・体感面の価値も備えます。
会場では、このペーパーターフを敷いた一角が子どもたちの遊び場・体験スペースになっており、寝転んだり歩き回ったりする様子から、その安全性と心地よさが実際に伝わってきました。屋外向けの製品も登場し、公共施設や商業施設での環境配慮型の空間づくりに向けた動きが進んでいます。
洋紙・板紙を扱う私たち田村商店と同じ「紙の商流」の中から、こうした脱プラ素材が生まれている——供給リスクの回避や脱プラを考えるうえで、示唆に富む展示でした。
会場で感じた「紙選び」の奥深さ
会場には、全国の製紙・紙販売各社が持ち寄った紙見本帳がずらりと並び、質感・色・機能の多彩さを一望できました。印刷・紙の専門誌『デザインのひきだし』編集長・津田淳子さんが、紙や印刷・加工を試すために作り続けてきた名刺コレクション(1人分なのに約100種類!)も並び、紙と加工の選択肢の広さを物語っていました。「どの紙を選ぶか」で、仕上がりも機能も大きく変わります。機能紙の“選定”を支える私たちにとって、紙選びの奥深さをあらためて実感する光景でした。




にぎわう会場と、同時開催の催し
会場は業界関係者に加え、一般の来場者や家族連れでも終日にぎわい、入場時には行列ができるほどの盛況でした。紙に触れて遊べる体験展示も多く、子どもたちの姿も目立ちました。テレビの取材クルーも入り、紙への関心の高まりを感じさせる熱気でした。



本イベントは、メディア・ユニバーサル・デザイン(MUD)フェアと同時開催。「見やすさから、行動につながるデザインへ」を掲げる情報設計の展示は、“伝わる紙面づくり”を考える私たちにも示唆に富むものでした。会場をめぐるスタンプラリーや、日本製紙連合会の啓発冊子「ペーパー君と巡る Paper World」など、楽しみながら紙と環境を学べる仕掛けも随所に。印刷メディアの文化を伝える『第77回 全国カレンダー展』も併催されていました。






まとめ ── 紙の繊維には、まだ可能性がある
紙の正体は繊維であり、その活かし方しだいで、硬い素材にも、糸にも、人工芝や衣類にもなります。今回見たファイバー紙も紙の糸も、脱プラや供給リスク回避という文脈で、これからますます存在感を増していく素材です。
一方で、「この用途に合う機能紙はどれか」を見極めるには、専門的な判断が必要です。機能紙選定ナビでは、用途やお困りごとに合わせて、最適な機能紙の選定をお手伝いしています。「こんな性質を持つ紙はないか」というご相談を、下記からお気軽にお寄せください。
紙の可能性は、まだまだ広がっています。
用途に迷ったら、紙のプロにご相談ください。
機能紙の選定相談を承っています。用途・ご要望をお聞かせください。
よくある質問
- ファイバー紙(バルカナイズドファイバー)とは何ですか?
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セルロース繊維を薬品処理で強く結び付けた、シート状の硬質素材です。軽いのに強靭で加工性がよく、生分解性に優れた脱プラ素材として注目されています。「水を含ませると成形しやすくなり、乾くと再び硬くなる」性質があり、工作やプロダクトにも使われます。
- 「紙の糸」や紙製人工芝は、普通の紙と何が違うのですか?
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原料の植物繊維(アバカなど)を糸状に加工したもので、強度や耐水性を活かして人工芝などに仕立てられます。紙由来のため生分解性が高く、ちぎれてもマイクロプラスチックの発生源になりません。
- ファイバー紙は脱プラ素材として使えますか?
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植物繊維が原料で生分解性に優れるため、プラスチックの代替素材として検討されています。ただし用途ごとに適性が異なるため、具体的な使い方は個別のご相談をおすすめします。
- 機能紙のサンプルや相談はできますか?
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機能紙選定ナビでは、用途に応じた機能紙の選定相談を承っています(機能紙のサンプルは、製品により小ロットでの有償購入となる場合があります)。まずはお気軽にお問い合わせください。
機能紙選定ナビ(株式会社田村商店)/取材:ペーパーサミットジャパン2026
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