導電紙とは?
導電紙(どうでんし)とは、紙に電気を通す性質(導電性)を持たせた特殊な紙です。
一般的な紙は電気を通さない「絶縁体」ですが、導電紙はカーボン(炭素)や金属系の導電成分を紙に混抄(こんしょう:原料に混ぜ込む)したり、表面に塗布・含浸することで、紙の形状を保ったまま電気を通す機能を持たせています。
この導電性により、紙の表面に発生した静電気を拡散・放電し、電子部品や精密機器の帯電を防ぎます。
たとえば、コピー機やプリンターに搭載されている感光体ドラム(光を使ってトナーを転写する中核部品)の包装では、静電気や光の影響を防ぐために導電紙が使用されています。
このように導電紙は、静電気による破損・誤作動・粉塵付着を防止し、製品の品質と安全性を守ります。


導電紙が使用される主な分野と用途
導電紙は、静電気対策(ESD対策)や遮光対策、電磁波干渉防止(EMI対策)が求められる分野で幅広く採用されています。
以下に、主要な使用分野をわかりやすく整理します。
ESD対策とは?
ESD(Electrostatic Discharge:静電気放電)対策とは、物体に蓄積された静電気が放電して電子部品や装置を損傷させることを防ぐための取り組みです。
静電気は、人や衣服、機械の摩擦によって発生し、数千ボルトに達することもあります。
この電気が半導体素子や基板に放電すると、破壊・誤作動・データ消失などを引き起こす可能性があります。
ESD対策は、これらの被害を防ぐために行われるもので、代表的な方法には以下のようなものがあります。
- 静電気防止衣・リストストラップなどの着用(人的対策)
- 湿度の管理(40〜60%RH)やアース接続(環境対策)
- 導電性・帯電防止性を持つ素材の使用(材料対策)
- 静電気対策エリア(EPA)の運用(設備管理)
ESD対策は、電子部品製造・組立・検査・出荷のあらゆる工程で不可欠とされています。
EMI対策とは?
EMI(Electromagnetic Interference:電磁波干渉)対策とは、電子機器が発する電磁波(ノイズ)が他の機器に悪影響を与えたり、逆に外部からの電磁波によって誤作動を起こすことを防ぐための取り組みです。
電子機器は動作中に電流・電圧が変化することで微弱な電磁波を放射します。この電磁波が通信機器・医療機器・計測装置などに干渉すると、ノイズ混入や信号エラー、誤作動などが発生することがあります。
EMI対策では、機器間の干渉を防ぐために以下のような手法が用いられます。
- シールド(遮蔽)構造の採用(金属ケース・導電性フィルムなど)
- フィルタ回路によるノイズ除去
- 接地(アース)処理による電位差の安定化
- ケーブルや基板のレイアウト最適化による放射低減
これらの対策を総合的に実施することで、電子機器が互いに干渉せず正常に動作できる環境を確保します。
電子部品・半導体業界(静電気放電=ESD対策)
導電紙が最も多く使用されるのが、電子部品・半導体分野です。
ICチップや基板はわずかな静電気でも破損するおそれがあるため、帯電防止包装材として導電紙が採用されています。
導電性成分が紙全体に分散しているため、表面に発生した電荷を均一化し、静電気放電を防ぎます。
| 用途 | 説明 |
|---|---|
| 電子部品包装 | ICチップ・基板・センサーなどを静電気から保護 |
| 半導体ウェハや電子材料の仕切り紙 | クリーンルーム内での帯電防止・静電拡散用途 |
| 感光体保護シート | 光と静電気の両方を遮断(王子エフテックス導電紙が代表例) |
➡ 目的:静電気破壊(ESD)防止・誤作動防止・クリーン環境維持
➡ 特徴:導電性+遮光性+耐傷性を重視
OA機器・精密機器メーカー(感光体・内部部品の保護)
OA機器(コピー機・プリンターなど)では、光や電荷を扱う部品が多く、静電気や光による損傷を防ぐ目的で導電紙が使われています。特に感光体ユニットやトナーカートリッジなどの遮光性が求められる包装材として有効です。
| 用途 | 説明 |
|---|---|
| 感光体ユニット・トナーカートリッジの包装 | 光や静電気を防ぎ、輸送中の破損抑制 |
| 内部部品の仕切り紙 | 摩擦帯電の発生を防止し、輸送・保管時の安定性を確保 |
➡ 特徴:遮光性・導電性・耐擦傷性の三要素を併せ持つ紙が採用されやすい
電磁波シールド・ノイズ対策用途(EMI対策)
電子機器が動作すると、微弱な電磁波(EMI:Electromagnetic Interference)が発生し、他の機器にノイズや誤作動を引き起こすことがあります。
導電紙は、カーボンなどの導電性成分を含むため、電気を通して電磁波を拡散・吸収し、干渉を抑える簡易的なシールド材として利用されます。
金属箔や導電フィルムほどの高い遮蔽性能はありませんが、軽量で加工がしやすく、コストを抑えられるため、試作・評価段階でのノイズ対策資材として適しています。
| 用途 | 説明 |
|---|---|
| 筐体内部のノイズ吸収・電磁波遮断材 | 電磁波を反射・拡散し、干渉を抑制 |
| 試作・評価用シート | ノイズ試験・仮設用途に利用しやすい |
➡ 特徴:軽量・低コスト・裁断・貼付加工が容易
クリーンルーム・研究施設(微粒子・帯電防止対策)
導電紙は、静電気による微粒子付着や試料汚染の防止にも役立ちます。
研究施設やクリーンルームでは、分析試料の搬送や機器の養生材として使われています。
| 用途 | 説明 |
|---|---|
| 試験サンプル・分析試料の台紙 | 試料への静電気付着を防止 |
| 機器間の仕切り紙・包装紙 | 帯電防止・清潔維持に貢献 |
➡ 特徴:紙素材のため使い捨てしやすく、衛生管理にも適する
梱包・物流分野(帯電防止包装)
輸送時の摩擦帯電は、電子機器や粉体製品の品質に影響を与えることがあります。
導電紙は、緩衝材や仕切り紙として帯電防止包装に利用され、静電気の蓄積を防ぎます。
| 用途 | 説明 |
|---|---|
| 電子機器・ICカードなどの輸送包装 | 静電気を逃がして安全に輸送可能 |
| 化学薬品や粉体などの帯電防止梱包 | 粉体の帯電・付着を抑制 |
➡ 特徴:通常の紙と同様に扱えるため、作業効率に優れています。
王子エフテックス 導電紙(導電性・遮光性)
カーボンを内添または塗工することで「遮光性」と「導電性」を併せ持たせた製品です。遮光紙として感光体など、光を嫌う素材の包装および合紙などに使用されます。導電性を活かし帯電防止し、静電気をカット。デリケートな電子部品などを帯電や静電気から守ります。
主な仕様

- 米坪:60g/㎡
- 寸法:1200×900mm、636×939mm(他寸法応相談)
- 主な機能:遮光性/導電性/耐傷性
- 主な用途:電子部品材の合紙・包装材(感光体保護シートなど)
- 利用例:感光体保護シート
導電紙に関するよくある質問
- 導電紙と帯電防止紙の違いは何ですか?
-
導電紙は、電気を通して静電気を逃がす性質を持つ紙です。
帯電防止紙は、静電気が発生・蓄積しにくいよう表面処理を施した紙です。導電紙は帯電防止紙よりも電気が流れやすく(表面抵抗値が低く)、
電荷をより速やかに拡散・放電できるため、
電子部品包装など、高いレベルの静電気対策(ESD対策)が求められる用途に適しています。 - 導電紙はリサイクルできますか?
-
導電紙は、カーボンなどの導電性成分を含むため、一般の古紙リサイクル工程には混ぜることができません。
使用後は、可燃物として焼却処理されるのが一般的ですが、地域や処理業者によっては、固形燃料(RPF)としてエネルギー資源に再利用(リサイクル燃料化)される場合もあります。
いずれの方法でも、環境負荷を抑えた安全な処理が可能です。 - 導電紙の価格はいくらくらいですか?
-
導電紙の価格は、種類・サイズ・厚み・枚数(ご注文数量)によって異なります。
まずは、想定されている用途やご希望の仕様(寸法・数量など)をお聞かせください。
内容を確認のうえ、最適な製品とお見積りをご案内いたします。 - 導電紙のサンプルをもらうことはできますか?
-
導電紙のサンプルは、種類によってご用意できるものとできないものがございます。
まずは、想定されている用途や使用環境をお知らせください。
内容を確認のうえ、最適な導電紙を選定し、サンプル提供が可能な場合にはご案内いたします。
導電紙のお問い合わせはこちら
お客様の用途・環境条件・求める性能に応じて、最適な導電紙を選定・ご提案いたします。
電子部品の保護や静電気対策など、どんなお悩みでもお気軽にご相談ください。
・電話 : ☎ 0258-46-9110(受付 平日9:00–17:00)
・メール相談 : 貴社の課題に合わせて最適な紙・加工を提案します
・リモート相談 : オンラインで仕様確認・お見積り
・画像診断 : お客様からお送りいただいた写真・画像をもとに、状況を確認し最適な対策をご提案します。
「紙のプロフェッショナル」が、貴社の課題を解決します。まずはお気軽にお問い合わせください。
「紙のプロフェッショナル」が、あなたの悩みを 解決 します
電話でのお問い合わせ ☎:0258-46-9110

























